「日本の投票制度は極めて厳格です」
このところSNSで、「日本の投票はインチキが出来る」、「選挙結果は信用ならない」、という投稿が目につくようになりました。
これが本当であれば、選挙に基づく民主主義の根幹を揺るがす大問題。
従って、私も調べてみました。そして私の結論は、「日本の投票制度において不正は『ほぼ』不可能」です。
何故「ほぼ」を付けたかと言えば、どんな制度でも、人が関与する以上完璧はあり得ないからです。
しかし次に見ていくように、投票用紙の書き換えも投票人のすり替えも、ほぼ不可能です。
それでは詳しく見ていきましょう。
ほぼ不可能です。これは、投票箱と鍵の扱いを見れば明らかです。
投票箱は、投票が始まる前に空であることを複数の人で確認し、複数の人が見守る中で投票が行われ、投票が終わるとふたをして鍵を二つかけます。
その鍵は、別々の封筒に入れ、複数の人の印鑑を押して封印し、金庫に保管されます。
施錠されたまま投票箱は開票日に開票所に持ち込まれ、大勢の担当者と各陣営から選出された立会人により施錠されていることが確認されます。
一方、金庫から取り出された鍵も封が開けられていないことを確認します。
ともに確認された後に投票箱は解錠され、開票・集計の作業が始まります。
つまり、一度施錠された投票箱は、開票作業の直前まで開きません。
このため、「鉛筆で書いた投票用紙を消して書き直す」といったことは、投票箱を開けない限り出来ませんが、箱を開けようにも金庫から鍵を出さねばならず、それが無理だからといって鍵や投票箱を破壊すれば、それが分かった時点でその選挙は無効になります。
仮に投票箱ごとすり替えたとしても、本来の投票箱の鍵と合いませんから不正であることが明らかになります。
また、「開票所で開票担当者が書き換えていないか」というSNS 投稿も見ました。これも開票所をご覧いただければお分かりいただけると思いますが、まずは大勢の担当者が相互監視をしており、それに加えて各陣営から選出された立会人の目もあり、さらには一般の方も開票状況を参観出来るという幾つもの目がある中で、不自然な動きをすることは不可能でしょう。
こちらもほぼ不可能です。以下のように色々な場合があり得ますが、どれも非現実的です。
まず、期日前投票を考えてみましょう。BさんがAさんの投票所入場券(選挙のお知らせと書かれた葉書大のもの)を手に入れ、Aさんになりすまして投票しようとします。
Bさんは、Aさんの住所、名前、生年月日をこの入場券に記入して提出しますが、受け取った係員はこれを見て、特に記載された生年月日と見た目の風貌が大きく異なる場合、声をかけることになります。
それを通過し投票したとして、後日Aさん本人が投票に来られ、Aさんの投票が済んでいるということになれば、警察に通報されることになります。不正に投票したBさんは、何月何日に投票したかが分かるほか、宣誓書も提出されていることから、こうした事象を基に捜査が進んでいくことになるでしょう。
期日前投票で、BさんがAさんの投票所入場券を持っていなかった場合も同じです。
Bさんは、宣誓書にAさんの住所、名前、生年月日を書いて提出することとなり、それ以降の流れは先ほどと同じです。
では、投票日当日を考えてみましょう。投票日当日に投票する場合、投票所入場券があれば名前の確認が行われ、投票所入場券が無い場合は氏名、住所を口頭で伝え、BさんはAさんになりすまして投票することになります。
しかしこれは、Aさんが期日前の投票をしていないことが確認されていなければなりません。
Aさんが期日前に投票しているにもかかわらず、Bさんが再度Aさんになりかわり投票しようとすれば、その場で警察に通報されるでしょう。
仮に、Aさんが重病で、投票出来るような状態ではないことが分かっていたとして、Bさんは、自らの一票を投じるのか、危険を冒してまでAさんになりすますのかと考えれば、自らの一票を投じることになるでしょう。
さらにBさんは、自らの票を投じた上で、投票日にAさんになりすまして投票しに来たとすると、二度投票所に足を運んだことが係員によって気付かれる可能性があり、これも極めて危険度の高い行為です。
このように、大きな危険を伴うなりすましを、投票結果に影響を与えられる規模で行えるのかと言えば、それは無理だと言わざるを得ません。
このように、日本の投票制度は極めて厳格です。
もちろん、冒頭で書きましたとおり、人が関与する制度に完璧はありません。
しかしながら、SNSで時折流れてくる「不正やりたい放題」はあり得ないとお分かりいただけたのではないでしょうか。
これからも安心して投票に行き、大切な投票権を行使していただければ幸いです